藪本勝治「『吾妻鏡』の文脈における宝治合戦記事」『國語國文』第90巻第7号22-40
野口実氏が史料として『吾妻鏡』を利用する前に必読の論文たちとして藪本勝治(やぶもとかつはる)氏の論文を挙げていたので(注1)、最新の論文を取り寄せて読むことにした。
薮本勝治氏は宝治合戦を以下に要約している。
「宝治元年(1247)6月5日、長く幕府の重心であった三浦氏は、得宗家の外戚となり勢力を伸長してきた安達氏と合戦に及び、一族滅亡に追い込まれた。いわゆる宝治合戦である」(p.22)。
幕府が編纂した『吾妻鏡』が宝治合戦をどのように描いているかがテーマである。
「近年の研究により、『吾妻鏡』は単に過去の出来事を記した書物ではなく、一定の構想に基づいて過去像を構築しようとする歴史叙述であることが明らかになってきた」(pp.22-23)
論文の構成を見てみる。
はじめに
1 反逆者としての三浦氏
2 冥加の招来
3 忠臣としての安達氏
4 摂家将軍の位置付け
5 時頼の絶対性の物語
おわりに
「そして、その構想の中心軸あるいは主題は、頼朝の政道を継ぐ泰時、時頼を経て時宗、そして貞時へと連なる、得宗家正統の系譜叙述にあることが見えてきた。今後も追求を続けていきたい」(p.37)と結んでいる。
鎌倉幕府の政治史をどう読み解くかは興味深いテーマである。
『吾妻鏡』は現代語訳で読んでいたが(注2)、この論文を読みながら読み返してみて、人名も数多く、用語が難しい上、背景知識がないと読み取れない。『御堂関白記』などと同様に現代語訳だからといって読んでわかるわけではない。膨大な知識を必要とする。歴史書の読み方の難しさを感じた。
(注1)野口実、2021/08/25のTwitterの一連の発言
https://twitter.com/rokuhara12212/status/1430323811887443968?s=21
(注2)五味文彦・本郷和人・西田友広編『現代語訳 吾妻鏡12 宝治合戦』吉川弘文館、2012年
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