『増補版 古典和歌解読』(2012)

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小松英雄『増補版 古典和歌解読 和歌表現はどのように進化したか』笠間書院、2000年、2012年増補版第1刷

書誌情報

小松英雄氏が駒沢女子大学を2000年春に退職する際に最終講義に代えて書いた紀要論文を抜本的に書き改めたもの。増補にあたり「補章 和文に応用された複線構造による多重表現」を加えている。横書きは紀要を元にしたからであろう。著者の本では他に『日本語はなぜ変化するか』(笠間書院、1999年)くらいしか横書きは知らない。

本書のポイント

小松英雄氏が「複線構造による多重表現」を古今和歌集に見出して、解釈を変えた。専門家は無視し続けている。そんな専門家の注釈書は読んでもしょうがないから段ボール箱に仕舞った。

本書で重要なのは「付章 方法論 文献学的アプローチ」と「補章」である。

付章は方法論の欠如を云う。

「『古今和歌集』に研究史とよぶべきものはない。なぜなら、いかなる研究にも、明確な目的と、その目的を達成するための方法とが不可欠だからである。歌学は作歌のための実学であり、近代的な意味における研究ではなかった。歌学は科学ではなかった。その伝統を継承した現今の注釈にも方法が欠如しているから、表現の核心に迫れない」(097)。

補章は著者の方法論に対する批判への批判である。実名が上がっているので、フォローしやすい。

「この章は、付章にもうひとつの方法論である。文献資料の表面(うわつつら)だけをなでた旧来の俗説を、時代遅れの理論?でひたすら擁護し、筆者が開拓した方法に基づく新たな解釈を無効化する試みが無効であることを文献学的アプローチによって証明する」(115)。

著者は「複線構造による多重表現」について、認めない学者をバッサリ。「独自の解釈」という表現はアテツケと理解した。この本はケンカの仕方を学ぶのに良いようだ。

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