『言葉にして伝える技術』(2010)

Goinkyodo通信 読書時間

田崎真也『言葉にして伝える技術』祥伝社新書、2010年、2019年第5刷

本書を読むと、普段、我々が何気なく遣う食事に関する言葉も思い遣りに欠けていたことが分かる。ソムリエでなくとも言葉にして伝える仕事はいくらでもある。お茶屋さんであれ、言葉にして勧めなければお茶の良さはお客には伝わらない。五感で味わうもののうち、嗅覚は再現性が難しく、これからの生き方のヒントをもらったようだ。四都手帖も五感手帖に変えたくなった(笑)

田崎真也氏は高名なソムリエだからワインの本かと思ったが(シャンパンの本は持っている)、ワインの話はオマケ程度で生き方の本だった。

あとがきにある箇条書きの意味を理解するためにも一読をお勧めする。

・紋切り型の表現や先入観を捨てること

・五感をひとつずつ意識して使うこと

・日常生活(とくに食事の時間)が五感トレーニングの場であると強く意識すること

・五感で感じたことをそれぞれ言葉に置き換えていくこと

・言葉を増やし、分類して言語化し、記憶すること

・相手や状況に合わせて、より受けとりやすい、適切な表現を選ぶこと

・基本は、ポジティブなものの見方に立って表現すること

注)眼識・耳識・鼻識・舌識・身識は、唯識でいう八識のうち前五識と言われる。我々の感覚器官は五根すなわち眼根・耳根・鼻根・舌根・身根である。我々は外界である五境すなわち色・声・香・味・触を五根を通して視覚・聴覚・嗅覚・味覚、触覚という五感に写し出されたもの(影像)として見ている。意識は前五識という現在識がそういうものであるかぎり、我々の脳の中にしかない。我々が語り合えると考えるのは同じ仕組みを持つと考えられているからである。言葉を通してしか伝えられないことを知る時、五識と言葉の関係を身体的につかみ直してみることろから始めなければならない。

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