『戦国の陣形』(2016)

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乃至正彦『戦国の陣形』講談社現代新書、2016年

2016年の本を手に入れる。新刊を読むことが多いとしたら、エンターテイメントに偏っているのだろう。

著者の乃至正彦氏(ないしまさひこ)は陣形につて論じる。「陣」は陳列の「陳」の俗字である。

白川静の『字訓』では「陣」は聖廟と戦車と解している。

軍事史が発達しない平和ボケの日本の歴史学については、藤本正行氏が『信長の戦争 『信長公記』に見る戦国軍事学』(2003)書いていたことを思い出す。

著者は映画や大河ドラマの戦闘シーンに関する疑問から本書の執筆動機を明らかにする。

学者が論じないのは史料がない場合である。有名な「鶴翼」の陣も残された史料からは随分と違うイメージとなる。陣形が「動く城」として工夫されてきたことからもV字は後世の想像の産物という話は納得できる。

律令制の陣形から中世の武士の陣形そして戦国、最後に大阪の陣まで論じる。

中世の戦は私兵の戦いであるため、纏まった兵種毎の陣形は組まれず、軍隊というより軍勢が実態を現すというのが面白い。

戦国大名が権力を集中したことで直属兵が増えて軍事編成の変化が生じた。旗本の兵種毎の編成を村上義清が試み、村上が頼った上杉謙信が発展させたことで陣形がどのように作られていったかの記述は興味深い。

武田の軍役定書(石高に基づく兵員と武装内容)を見ると、武田、上杉、北条の軍制が戦争を繰り返すなかで同様な軍制をしいていくのに対し、織田は史料が見つかっていないこともあり、軍制は分かっていない。ただし、佐久間信盛への折檻状に兵の動員人数を増やさないことが挙げられていることから、軍制は整っていなかったことが推測される。信長の期待に家臣が応えていないので怒っている。数字で示せば、軍制違反がはっきりするのでこのようなことは生じない。

204頁と薄いので気がついたら読み終わっている。

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