午後から雨になっていたが、タクシーを呼んでも来ないだろうと思って、歩くことにした。外は少し強めの雨が降っていた。革靴を濡らし、服の裾に跳ねる水溜りの水にうんざりしながら一直線に向かった。料亭ではお迎えが立っていて、案内してくれた、タオルで裾の水気を払ったけれど、上着は湿っていて、クローゼットに入れてもらうのが憚られた。
I氏からは、案の定、タクシーが捕まらないので遅れるとメッセージが入る。出された茶菓子は近所の和菓子屋の栗羊羹であった。
少し、騒がしくなってI氏が登場すると、芸妓さんも左右に着くだけでなく、半玉さんもやって来て賑やかになる。I氏とは差し向かえだが、テーブル越しには遠い。小さなビールグラスは女将さんの好みだとかで、冷たいうちに飲むためだという。そういうわけで、せっかく運ばれてくる季節を味あわせるくれるはず料理に手をつける暇がなく、左右から勧められるのであった。
ひとしきり飲んで、踊りとなる。秋の向島を扱った曲が多いのも、この地がそういう歴史を持った街だという思いがして来た。
日本酒を飲み始めるととめどがなくなる。I氏はマイ猪口を持参してマイペースで飲もうという魂胆であったが、そうは問屋が卸さない。タップリ飲まして差し上げるのが役割と心得ている人々から勧められるのであった。
11月11日には12年振りに向島をどりをするという。料亭も減ったが、だいぶ芸妓さんも減ってしまった。この街で暮らしていても、料亭とは縁がない。I氏は先達で気さくに会話を楽しんでいるのが何よりも嬉しい夜だった。2階のバーへは行かずに、飲み直しに外へ出たのであった。まだ雨は降っていた。
第七回向島をどり 曳舟文化センター 2022年11月11日(金)第一部12時〜、第二部15時〜
注)下町の料亭は先達のI氏の言い方である。普通は花街の料亭とかいう。面白いのでタイトルにしてみた。
コメント
下町の料亭!意識せず使用してしまっておりましたが確かに仰る通りで。
ないし「向島の料亭」ですかね?
そうですね。花街くらいですかね。面白いのでタイトルはそのままにしておきます(^^)