阿満利麿『法然の手紙を読む』ちくま学芸文庫、2025年
書誌情報
本書は「法然上人のお手紙を読む会」での解説がきっかけで書き下ろされた。
解説、手紙の原文、訳、さらに解説が一つの手紙毎に区切って取り上げられる。これは法然の論理が明快であることから可能となるのだろう。巻末に法然の手紙 原文と略年表に主要参考文献がある。
親鸞の『教行信証』をめぐる本を読んで、法然のロジックが明快であるというので読んでみたくなった。ちょうどちくま学芸文庫の新刊が出たので買ってみることにした。
阿満利麿(あま・としまろ)氏の文章は分かりやすい。法然のテキストを引用する際に読みやすくするため、カタカナはひらがな書きにし、漢字を補い、句点を増やし、ルビも振ってある。旧仮名遣いであるが、すっと読める。
それだけではなく、阿満利麿氏の説明の仕方が上手いのだと思う。尤も、文法的に確認して読んでいるわけではないが、法然の教えを理解するのにはよい感じだ。山折哲雄氏の『『教行信証』を読む』(2010)での法然像を阿満利麿氏の解説で補うことで親鸞との違いがより明確になった気がする。
法然の説法のたたみかける論理展開を読んで説得されないわけにはいかないだろう。
阿満利麿氏が「法然が善導を阿弥陀仏の化身だと主張することは、浄土への道には神秘的体験が不可欠だというのではなく、人間の根本的な
願いが阿弥陀仏とつながっていることを確認するためではないだろうか」(p.67)と、「善導の阿弥陀仏化身説」(p.41)を解き明かしていた。

法然の手紙を読む
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