吉田健一『本当のような話』集英社文庫、1977年第3刷
吉田健一の『本当のような話』(集英社、1973年)は寝室の本箱に『書架記』(中央公論社、1973年)と一緒に挿してあって、時々開くようなことをしている。今回は、実家の古い文庫用本箱に挿してあった文庫版を取り出して読んでいる。ブックカバーをとって埃を払ってみたら、帯の文句に誘われてそのまま読むことになった。
解説で清水徹氏が、「一見まったく融通無碍な語り口からなるように読めるこの小説は、じつは、かなり念入りにつくられている」(P193)とみている。同感である。吉田健一が「伯爵未亡人を主人公にして一種のサロン小説」(P194)を書いてみせた。「三つの会食の情景とそこでの人物たちの会話のやりとりが、サロン小説の愉しさをぼくらに味合わせてくれる」(P194)のは間違いない。「吉田健一の独自な東西文明論」(P194)という「舞台装置の基層」(P194)があって(サロンでの)会話が成り立のである。清水徹氏は「ロココ小説」(P198)と評している。
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