内田市五郎『西洋の本の本』日本古書通信社、2026年、自費出版、100部
Le Petit Parisienのオーナーさんが内田市五郎氏から寄贈された本を行くたびに読んでいる。
(書誌情報)
本書は内田市五郎氏が「Books on Books」という表題で、『日本古書通信』に連載した内容をもとにしている。1984年5月号から1997年12月号のうち87篇を選んだとあとがきにある。
「Books on Books」というタイトルにあるように本に関してあらゆる本が紹介されている。
注記が詳しいのは、No.76トマス・フログナル、ディブディン著『ビブリオマニア、書物狂:その病気の歴史、症状、治療法』ほかで、「本書の価値は主として注にあると言われている。たしかに噛むほどに味が出る」(p.210)と感想を述べているからと推察する。
No.68ジェフリー・ウェイクマン著『ヴィクトリア時代の書物の挿画ー技術革命』では「写真製版」が扱われていた。「photogravure(グラビア印刷)、line block(線画凸版)、hafe tone block(網目凸版)、hyalographなどの項目」(p.184)などがある。内田市五郎氏は版式と技法の理解が難しかったという。そう書いてあったとして、私がそれを理解できるわけではない。実物との対比が必要なのである。
No.78ロジャー・ハドソン編『ザ・グランド・ツアー1592年〜1796年』他
「グランド・ツアーという英語は、今でも英国の旅行社などが、ヨーロッパ旅行の意味で用いているらしいが、歴史的に狭い定義をすれば
「18世紀の英国の裕福な家の子弟が教育の最後の仕上げをするために出かけたヨーロッパ旅行のこと」である」(p.241)。
この記述を読んで、SOMPOジャバン美術館で「カナレットとベエネツィアの輝き」(2024年)でカナレットのベニスの画がグランド・ツアーの土産になることやJ・S・ミル(1806-1873)がジェレミー・ベンサムの許で1年間南フランスで暮らした話(関口正司『J・S・ミル 自由を探求した思想家』中公新書、2024年)を思い出した。私の想起がそのものずばりでないのは英国の本に疎いからであろう。内田市五郎氏はグランド・ツアーの内実を伝える例を挙げていたが、必ずしも期待通りになるものではなかったのだろう。フランス革命とナポレオン戦争でグランド・ツアーが終焉したのは、カナレット展の図録に書いてあったことと同じであった。
No.80A.J.クルーズ著『世界のマッチラベル』
内田市五郎氏は「蔵書票コレクターの目でみると、マッチラベルの世界はやや未分化な面が感じられるような気がする」(p.220)と感想を述べている。そういえば、Le Petit Parisienのオーナーさんも最近、大量のマッチ箱を手に入れたので、蔵書票研究者の目でどう分類するか興味がある。日本のマッチは明治に始まり、ほぼメディアとしての役割を終えている。蔵書票も版画としてはあっても本に貼るという文化はもうないのだろう。

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