渡部昇一『アングロサクソンと日本人』新潮選書、1987年
「新潮社の文化講演会」(昭和57年前期・1月ー6月の連続講演)のテープを書き起こしたものをもとに手を加えたものである。平易な文章であり、耳で聴いて分かる説明になっている。今なら地図などのビジュアルを用意するだろう。島国であるイギリスと日本の比較文化論となっている。高坂正堯がベネチアと日本を比べたのも島国との比較としてであった。
注)高坂正堯『文明の衰亡するとき』新潮選書、1981年
お盆が終わって、お精霊さんは帰っていった。本書はキリスト教の入る前のゲルマン民族の宗教観から話が始まる。親から生まれたことを重視する祖先神として日本と同じ祖先神という構造だったが、キリスト教という高等宗教の神である非祖先神が入り、祖先神を捨てたといっている。日本はどうかというと、仏教という高等宗教が入ってきたが、祖先神と両立したので、盂蘭盆に祖先の霊が帰ってくる習俗が残っている。
著者はアングロサクソンのいわれを説明する。イギリス人のことを普通アングロサクソンという。これはアングル人とサクソン人を合わせた名称であると。北ドイツあたりに住んでいたゲルマン民族の部族で449年にブリタニアに侵入して定着した。イギリスにはその後バイキングが来て国を建てたが、1066年に有名なノルマン・コンクェストがあり、ノルマン人のギョーム(ウィリアム1世)がフランスのノルマンディーから来て国を建てた。われわれの知っているイギリスはこれからである。
こんな話をしながら渡部昇一が会場から笑いをとって6回も講演したのかと思う。私は文化放送の百万人の英語で渡部昇一が英語の語源の講座を持ったのを聴いたくらいしかない。
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