堀田善衞『定家明月記私抄』新潮社、1986年第2刷
「世上乱逆追討耳ニ満ツト雖モ、之ヲ注セズ。紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」(P7)
三島由紀夫が「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」と講演で言ったのはいつのことだったか。堀田善衞の『定家明月記私抄』の序の記は藤原定家の決意で始まる。『明月記』など読んだことがなくてもこの言葉は様々に引用されて知っている。
堀田善衞にとっても驚愕の一言だった。
「定家のこの一言は、当時の文学青年たちにとって胸に痛いほどのものであった。自分がはじめたわけでもない戦争によって、まだ文学の仕事をはじめてもいないのに戦場でとり殺されるかもしれぬ時に、戦争などおれの知ったことか、とは、もとより言いたくても言えぬことであり、それは胸の張裂けるような思いを経験させたものであった」(P8)。
以前、定家が熊野御幸に随行した話を読んだことがある。『明月記』の熊野御幸を朧谷寿先生の講座で取り上げたのだった。世上不安の増す中、克明な日記を綴る定家の心のうちに分け入るような堀田善衞の私抄を読むとき、定家と同様に私も疲労困憊していくのであった。
熊野御幸を資料で読む
堀田善衞は「少食」(P161、163)としか書いていない。何を伝えたかったのだろうか。
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