押上文庫さんで飲んでいた時、辻邦生の話が出て『嵯峨野明月記』のことが思い出された。登場人物は一の声(本阿弥光悦)、二の声(俵屋宗達)、三の声(角倉素庵)である。三人の獨白の形式の物語だった。事務所の本棚にあったそれはパラフィン紙が焼けていた。触ると玉葱の皮のようにパラパラと落ちてくる。
本阿弥光悦といえば、東京国立博物館で特別展「本阿弥光悦の大宇宙」が2024年1月16日(火)〜3月10日(日)まで開催されている。何時も東都手帖に日程を記録しているにもかかわらず、忘れてしまい会期が終わってしまっているのだから、仕方がない。本阿弥光悦は何度も見てきているので、直に見たいものがあれば行くかもしれない。混み合う展覧会に足を運ぶのは気が進まないのである。
辻邦生『嵯峨野明月記』新潮社、1971年、1973年9刷
コメント