上山春平『埋もれた巨像 国家論の試み』岩波叢書、1977年、1978年第2刷
本箱を整理していて出てきた本である。藤原不比等をテーマにした番組を見たので、確か、あったはずと連休に探したのであった。パラフィン紙が黒変してパラパラと落ちるので、読む度に掃除が必要になる。
まえがきを読むと、Ⅰ 序章 天皇制の原形を読んで、Ⅱ 法華寺の維摩、Ⅲ ウナタリのタカミムスビを後にして、Ⅳ 記紀の神代巻と不比等、Ⅴ 藤原ダイナスティの形成を読んでから、ⅡとⅢを読むように指示がある。
書いた順に読めという注文は珍しい。展望が開けてから書いたものを読むことが著者の勧めであるので、それにしたがって読んでみた。
序章が全体を要約しており、あとは序章の解説になっている。序章だけ読めば十分に著者の主張は理解できる。
上山春平の企図は、副題にある通り国家論である。上山春平の関心は八世紀初頭、十七世紀初頭の徳川幕府成立期と明治維新期にある(p.vii)。
明治維新期は『明治維新の分析視点』(講談社、1968年)があるが、未読である。徳川幕府成立期は書かずに終わったと思う。したがって、『日本の国家像』(新NHK市民大学叢書、1980年)が『埋もれた巨像』のあとに続く国家論である。しかし、律令国家論が中心である。上山春平編の京都大学人文科学研究所の共同研究である『國家と價値』(京都大學人文科學研究所、1984年)のなかで坂本賢三氏の「日本近世国家成立の思想的背景」が徳川幕府成立期を扱っていたが、上山春平は「法と国家ー日本律令国家論序説ー」というまとめをしているだけであった。正義論のロールズが注目された時期であることが、序からも窺える。次はロールズへ行くことになるのか。プラトンの『国家』も中心テーマは正義である。
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