『中先代の乱 北条時行、鎌倉幕府再興の夢』(2021)

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鈴木由美『中先代の乱 北条時行、鎌倉幕府再興の夢』中公新書、2021年

『逃げ上手な若君』のマンガで北条時行の話を読む気になった。結構マニアックなテーマなのである。

山田邦和同志社女子大学教授がTwitterで感想を書いていた。

「彼の父義朝は、当時政権を掌握していた平清盛と敵対し、平治の乱(平治元年〔1159})で敗れて討たれた」(2頁)。

「私の認識としては、保元の乱の後は平清盛が政権を掌握したなどというのはかなりマズいと思う」(注1)。

序章で鎌倉幕府の開創から始めたところで、私など読み飛ばしていたが、山田邦和氏は読み進めなくなったという。ささいな一点に拘るのが学者なのだと思う。概説は抽象度を上げ解像度を下げるので厳密さにかけるきらいがあるので、書くのが難しい。

清盛が「政権を掌握」していたというのは大雑把過ぎる言い方だと思うが、本題の前の概観なので、先に進む。

北条時行の反乱である中先代の乱は建武期に起きた数多くの反乱の一つであるが、この乱の意義付けはどうなのだろうか。

「中先代の乱の最大の意義といえば、やはり、結果的に足利尊氏が建武政権から離反するきっかけを作ったことにあろう」(184頁)。

亀田俊和氏が蔵元一宏他『新説戦乱の日本史』(SB新書、2021年)の第2章て中先代の乱について鈴木由美氏の研究を紹介した後で、結果的に室町幕府ができたとしているので(注2)、妥当な評価なのでしょう。

(注1)
https://twitter.com/fzk06736/status/1424989121399844864?s=21

(注2)
「中先代の乱の「結果」は、敵も味方も誰も予想しない結果になったのだと、私はみています。この戦いが、室町幕府誕生のきっかけとなる戦いであったのは事実です。しかし、それ以上の意義がこの戦いにあったかというと疑問です。わずか二か月ほどで終わった戦乱ですし、後世に与えた影響という点でも、最終的にに幕府再興を目指した北条一族残党は掃討されてしまいますので、それほどの意義があったとは考えられないと思います」(『新説戦乱の日本史』76頁)。

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