源顕兼編、伊東玉美校訂・訳『古事談 上』、ちくま学芸文庫、2021年
書誌情報
本文は丹鶴叢書本を底本とした。
漢文体を平仮名交じりに読み下している。
人名に注、訳と評からなる。
ちくま学芸文庫のための書き下ろしである。
上巻に「はじめに」7頁あり。
下巻に主要参考文献、解説、人名索引
第一 王道后宮
第二 臣節
第三 僧行
第四 勇士
第五 神社仏寺
第六 亭宅諸道
「『古事談』は建暦二〜建保三年(一二一二〜一五)頃、後鳥羽院政の全盛期に、源顕兼(みなもとのあきかね)が編纂した説話集(短編物語集)である。(省略)鴨長明作『発心集』と同時代の作品である」(P023)。
鴨長明の『発心集』は読んだことがある。『古事談』よりは説話が長く、評価も付けていたと思うけど、悲しいかなすでにうろ覚えである。『古事談』は第二巻五五 零落したる清少納言、秀句の事 第二巻五七 清少納言、開を出す事 など短いエピソードで、現代語訳がないと読み取れないくらい簡潔なのである。紫式部のエピソードがないのが残念である。
『古事談』のたのしみ方
伊東玉美氏の文章を引用して終える。
「大きな人物、小さな人物の多面的な生き様を、愉快に、時にしみじみと味わう。そして、いくつかの謎は心に残り、解決や新たな評価の時を静かに待つ。それがこの作品の、そして説話文学のたのしみ方だと思う」(P494)。
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