國方栄二『哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ』岩波新書、2022年
通勤時間に読むにしては内容が重いのである。それでも読むのは、山本芳久著『アリストテレス『ニコマコス倫理学』』(NHK出版、2022年、kindle版)に幸福の議論があったためだ。NHKのテキストを探してみたが、見つからなかったのはkindle版を選んだからだった。冊子だと思い込んでいたのだった。5月のことをもう忘れているのである。fire7に付いてきた3ヶ月無料のkindle unlimitedで色々と本を開いたので、画面が押しやられてしまったようだ。だいぶスクロールしたら出てきた。だからと言って読むわけではないのだ。テーマはアリストテレスの幸福論ではない。なぜ、現代は幸福を論じなくなったのかである。
人生の目的とか幸福を考えるのは、人生の終わりに差し掛かってきて、過ぎ去った年月の意味を考えたいと思うようになったからだ。時代に対して無力であったことを感じて終わるのも仕方のないことである。昔、台湾旅行でガイドが人生の目的を唐突に聞いてきた。誰も答えられないことで、日本人は可笑しいと言われた。我々は何も考えず働いていたのだろうか。それとも愛する人のために働くと言うことが気恥ずかしかったのだろうか。今になってはもうわからないが、違和感を感じたことが、その記憶を留めることになった。
ソクラテス、プラトン、アリストテレスが生きた時代はアテナイなどの都市国家(ポリス)の周りに専制国家があったが、それらはバルバロイとみなされていた。ソクラテス達は都市国家の哲学者であった。マケドニアにより古代ギリシアのポリスが崩壊して以降は、人々はインペリウムの下で生きることになる。ストア派やエピクロス派の生きたギリシアやローマである。
今の世の中も、複雑であることに変わりはなくて、民主主義や権威主義と呼ばれる国家があり、その内実はそれぞれに異なっている。我々は時代を超えて生きることはできないから、インペリウムの下で生きた人々と同じく独裁者のいる時代を生きている。そう考えるとストア派などの哲学が何をテーマにしたのか興味が湧いてきたのである。
長々と本書の購読理由を書いてみた。
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