『ヨーロッパとイスラーム世界』(2020)

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R.W.サザン、鈴木利章訳『ヨーロッパとイスラーム世界』ちくま学芸文庫、2020年

 

書誌情報

本書は1980年に岩波現代選書として刊行されたR.W.サザーン『ヨーロッパとイスラム世界』の著者名とタイトルを変更して文庫版した。

山本芳久氏が解説を書いているのを、Twitterで知ったので、早速購入してみた。

3つの時代区分

サザンはヨーロッパ中世のイスラーム観を3つの時代区分で考察している。

「無知の時代」イスラームの誕生から12世紀半ば

「理性と希望の世紀」12世紀半ばから13世紀末

「洞察の時」13世紀末から15世紀半ばまで

「イスラム教に対する純粋な無知、そして、キリスト教の聖典である聖書に基づいて一方的にイスラム教を解釈しようという傲慢な姿勢の見られた「無知の時代」から始まり、イスラム教の聖典であるクルアーンを翻訳し、より理性的な仕方で他者であるイスラム教を理解したりキリスト教に改宗させたりすることが可能だという楽観的な見通しの垣間見られた「理性と希望の世紀」を経て、楽観的な見通しの破れた失望と挫折を基調としつつも、一部の優れた思想家による優れた「洞察」が生み出された「洞察の時」。中世ヨーロッパのイスラーム観という、我が国においては一般にはほとんど馴染みのないテーマについて、サザンのこの書物は、実に鮮やかな見通しを与えてくれる」(P225)。

山本芳久氏の的確な要約によって、本書の巨視的な見通しを知ることができる。山本芳久氏はサザンの微視的な記述についてもダマスコスのヨアンネスについてサザンがごく簡単に言及したところを解説し、「ヨアンネスの主著である『知識の泉』は、ギリシャ教父の教えを集大成した書物として現代に至るまで多大な影響を及ぼして続けている」(P237)と補足している。注釈たりとも油断ならない。

更なる読書のために

山本芳久氏は、更なる読書のためにカトリック神学者であるL,ハーゲマンの『キリスト教とイスラーム 対話への歩み』(片山八巻和彦、矢内義顕訳、知泉書館、2003年)と新約聖書学者であるヨアヒム・グルニカによる『聖書とコーランーーどこが同じで、どこが違うか』(矢内義顕訳、教文館、2012年)および『コーランの中のキリスト教ーーその足跡を追って』(矢内義顕訳、教文館、2013年)を挙げている。

 

まだ、見取り図が描けないので、このあとをどう進めるかは分からない。

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