加登川幸太郎『三八式歩兵銃 日本陸軍の七十五年』ちくま学芸文庫、2021年
日本陸軍の通史であるから、叙述は概略的にならざるを得ない。武器の解説がやや詳しい感じの本である。
第二章 明治の新軍
大村益次郎による明治の新軍の構想は、山縣有朋がキーマンとなって発展する。西南戦争も武器の差が解説されていた。
山縣有朋は、伊藤之雄氏の『山県有朋 愚直な権力者の生涯』(文春新書、2009年)をいつか読むことを考えてここにメモしておく。
ゲベール銃について、「幕府が文久二年(一八六二年)に買い入れた銃に雷管発火式のゲベール銃(オランダ製)がある。全装滑腔式の銃で、弾丸は球形の鉛弾である。口径一七・五ミリと大きく、着剣できるようになっている」(P78)。
P79の写真の説明は「ゲベール銃 幕末から明治初期にかけての新式ライフル銃であった」とあり、記述に矛盾がある気がする。
薩摩が採用したエンピール銃(英国製)は施綫(しせん)銃(ライフル)である。ゲベール銃は滑腔式であったが、旋条式に改造されたゲベール銃が出ていたので、それをもってゲベール銃を「新式ライフル銃」と言ってもいい時期があったのだろうか。
いつか調べてみたいので、著者の参考文献を見てみたが、該当しそうなものはなかった。そこで、以前読んだ本を本棚が引っ張り出してきてメモすることにした。
注)「この時期に起きた銃器の発達は、ごくおおざっぱにいえば、ゲベール銃からミニエー銃へ、滑腔(かっこう)式から施条(せじょう)(ライフル)式へ、前装(口込くちごめ)式から後装(元込もとごめ)式に変わったと要約できる。その大略を洞富雄『鉄砲ーー伝来とその影響』(一九九一)、岩堂憲人『世界鉄砲史』(一九九五)、所荘吉『図解古銃事典』(一九九六)などからまとめてみよう」(P74、野口武彦『幕府歩兵隊 幕末を駆けぬけた兵士集団』(中公新書、2002年)
その概略を読んでも、ゲベール銃が「滑腔前装備式の洋銃」(同P75)を表す言葉として当時使われていたとしか書いてないので、本体に当たるしかないことが分かった。
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