『日本のことばと古辞書』(2003)

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山田俊雄『日本のことばと古辞書』三省堂、2003年

「闇から牛」は「闇」をどう訓むかという話で、その前振りに中谷宇吉郎がでてくるのが面白い。中谷宇吉郎は世の中の研究方法を概観して、2つの型に分類した。警視廳型の研究とアマゾン型の研究である。山田俊雄氏の講演では樋口敬二編『中谷宇吉郎随筆集』(岩波文庫、1988年)の中から「比較科学論」を引用していた。

警視廳型の研究は委託研究のように、「初めから論文ができているような形である。唯、その論文は、測定数値のところだけが空白になっている。その空白のところに、数値を書き込めば、研究は終了する」。

「警視庁型の研究が、その極限に近づくと、その先にアマゾン型の研究が待っている形である」。

「アマゾンの秘境に立ち入る生物学者は、其処にどんな珍しい新種があるかを知らない。対象の実体を知らないばかりでなく、そういうものがあるのかないのかも分からない。従って新しい発見の方法は唯一つしかない。常に眼を開いて、注意深く探索をつづけるより外に方法はない」。

この例えをみるとなんかユーモアを感じてしまう。

当然、山田俊雄氏はアマゾン型で感を働かせて、「闇」を探っていく。このあたりは執拗に感じて、講演で聴いていたら辟易しそうだ。

「闇から牛」は「闇から牛を引き出す」とのこと。「やみ」、「くらやみ」と訓む例もあげていたが、「くらがり」と訓む。しかし、この訓みは消滅しつつあるという。

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