『読書人の浅酌』(1991)

読書時間

谷沢永一『読書人の浅酌』潮出版社、1991年

「浅酌」とは三省堂大辞林によれば、「ほどよく酒を飲むこと。小宴を催すこと。」とある。谷沢永一氏は酒が好きなようである。ほどよくということもその度量によって違うものである。読書人は、しかし、酒を飲みながら本を読むものなのだろうか。人と酒を飲むときは既に読んだ本の話をするような気がする。本の話題は読書人にとって酒の肴である。

さて、『読書人の浅酌』は、どちらかというと本の話より、人の話のようだ。人間通の話題が見える。もっとも、雑多なエッセイをまとめて本の形にする編集者の見立てがタイトルということなのだろうが。谷沢永一氏が1991年に関西大学を退職して名誉教授となる話が「編集者と著者との密談」にある。

私は、読みたいと思うエッセイが一つでも入っていれば買うので、この本には巻末月報と称して中村幸彦氏の「谷沢風二刀流」や向井敏氏の「コラムの文体」という著者を語るエッセイがついていたので、買うことにした。谷沢永一氏の本文は、すでにどこかで読んでいる話と重なることが多い。本の話は『紙つぶて 自作自注最終版』(2005年)に限る。文学の話は、今読んでいる『標識のある迷路 現代日本文学史の側面』(1975年)などそれに向いている本がある。人の話は「通」シリーズがある。

となると、本書のようなエッセイは、やはり酒をちびちび飲みながら、ページをめくり、色々と浮かんでくる想念を独り愉しむ読み物なのだろうか。それなら「読書人の独酌」であって、本を肴に人と酒を飲むという『読書人の浅酌』とはならない。

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