『武蔵と五輪書』(2002)

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津本陽『武蔵と五輪書』講談社、2002年

 

書誌情報

『五輪書』の現代語訳と津本陽氏の評釈からなる。

渡辺一郎校注『五輪書』(日本思想大系『近世藝道論』所収、岩波書店、1972年)より『五輪書』の原文と付録に『兵法三十五箇条』が付いている。旧仮名遣い・旧漢字の原文の読みは鎌田茂雄『五輪書』(講談社学術文庫、1986年)よったとある。以前読んだのはこの文庫だった気がするが、記憶が定かでない。

 

津本陽氏も2018年に亡くなられたので、久々に読み返すことになった。武蔵の『五輪書』は地・水・火・風・空の5巻からなる。五大から巻名を取ったことは明らかであるが、兵法という不立文字を言葉にしたものだから、口伝が入るのは当然としても、読んで分かる内容ではない。身体の技は言葉では伝わらない。それでも武蔵は己の経験を言葉として残した。迫力は感じるが、剣術修行を重ねなければ知り得ないものがあることも確かだと思う。

 

『五輪書』は細川家蔵本に拠ったとあるが、武蔵真筆ではなく、写本である。序について、津本陽氏は疑問を呈している。

 

「序文の内容はこの通りである。武蔵が述べたものとすれば、疑義とすべき点がひとつある。五十歳の頃に兵法の道理を会得してのち、探究をすべき道もなく日を送っているという点である」(P25)。

 

兵法家が鍛錬を休むことはないはずという指摘はもっともだと思う。

 

前に読んだ時に書いた通り、水の巻の最後の言葉の記憶を新たにしておく。「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす」。

 

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