『真田四代と信繁』(2015)

読書時間

丸島和洋『真田四代と信繁』平凡社新書、2015年

最近、立て続けに真田関係の本を読んでいる。やはり、大河ドラマが出版社のターゲットになっていたのだろう。大坂夏の陣は2015年が500周年記念なのだが、あのドラマのせいでずれたおかげで、良書が間に合ってよかった。今年の大河は「真田丸」、脚本は三谷幸喜氏なので楽しみだ。

丸島和洋氏は真田氏の研究に縁があると本に書いてある。高野山へ毎年登山して供養帳や過去帳を調査されているのは以前Twitterで見たことがあった。もうフォローしていないので、その後は知らないが、良質の史料が少ない真田氏の研究には、新たな史料の発見・収集が欠かせないのであろう。

本書は新書で302pある。

真田幸綱(46p、15%)

真田信綱(16p、5%)

真田昌幸(122p、40%)

真田信繁(60p、20%)

真田信之(22p、7%)

その他は、はじめに、あとがき、年表、主要参考文献である。真田昌幸に40%を真田信繁に20%を費やしている。

真田四代の通史に真田信繁を加えたものだが、真田信之が7%と少ないのが残念だ。

読みどころは、第三章真田昌幸である。

ここに費やしたせいで真田信之が少ないのかもしれない。

「正室山之手殿の出自」(P84-89)は真田昌幸の正室のことを論じている。いずれにせよ確定できないことは、さらりと通り過ぎるところだが、丸島氏は6つの説を取り上げて論評している。歴史研究者の考え方がうかがえて面白い。

ところどころに丸島氏の考え方が顔を出す。

「なお、現在は「惣無事」を法令とみなすことに否定的な見解が主流になりつつあるが、筆者は中世法の一環として成り立ちうると考えている」(P158)。これは『戦国大名の「外交」』(講談社選書メチエ』で披瀝されている。

「朝鮮出兵の中の真田氏」では、「よく秀吉が「刀狩り」などによって「兵農分離」を推し進めたとされるが、事実ではない」(P180)とか、「兵農分離があったかどうかについては、より問題である」(P181)と脇道それるので、楽しくなる。

「一般に、秀吉生前から五大老が政権運営に参加したとされることが多いが、これは事実ではない」(P186)。

「戦国大名にせよ、江戸幕府にせよ、外様が政権運営に関与することはない。したがって秀吉生前は、五奉行を含む豊臣直臣団によって政権運営かなされていた」(同上)。

これなどは、真田幸綱が外様の先方衆であるのに対し、武田家重臣の武藤家を嗣いだ子の真田昌幸が譜代家臣として処遇されたくだりを読んできたものにとっては納得できる話である。

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