桑原武夫『論語』ちくま文庫、1985年
書誌情報
筑摩書房より、1974年『中国詩文選4論語』として刊行、のち1982年に単行本として再刊したものをちくま文庫とした。学而第一より郷党第十まで漢文、書き下し、解説が書かれている。私と『論語』というエッセイの他、孔子年表、文献があり、解説は河合隼雄である。
昔から公冶長第五あたりが『論語』を読み始めた人が辿り着くところといわれている。本書は堯曰第二十まで行かずに半分の郷党第十で終わっているので、公冶長よりは進んだといえる。道理で、私が読んだ記憶がないはずだ。郷党第十まででは、流石に『論語』としては十分でないと思ったのだろう。
しかし、桑原武夫は「伊藤仁斎の説に従った。この洞察力に富む町の儒者は、『論語』のうち、最初の十篇と以後の十篇とは性質を異にし、前者、いわゆる「上論(じようろん)」が正篇としてまず編集され、ついで後半、いわゆる「下論(げろん)」が続篇あるいは補遺として少しのちに編まれたものとした」(p.255)ので、十篇でよいというのである。
流石に、子安宣邦先生も仁斎の説に従ったが、『仁斎論語『論語古義』現代語訳と評釈』上下巻としているので、桑原武夫説は極端である。
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