『京の社』(2022)

読書時間
岡田精司『京の社 神と仏の千三百年』ちくま学芸文庫、2022年
書誌情報
あとがきによると、1993年に、大阪毎日文化センターで「京の社」と題して、24回にわたって行った講座を基に書き下ろしたとある。
2000年に塙書房で刊行したものをちくま学芸文庫とした。宮内庁正倉院事務所保存課調査室長の佐々田悠氏が解説している。
「この本に出てくる古社も、歴史好きの人の、旅行好きの人なら、少なくとも半分は思い出にある場所でしょう」(p.5)。
残念ながら当たっている。しかし、本書のポイントは押さえていないのである。
古代から近代までを一望する約20社とあるが、数えてみることにした。
第一章 上賀茂神社、下鴨神社、(貴船神社、pp.45-47)
第二章 伏見稲荷大社
第三章 日吉大社、(今日吉神宮、p.99、p.101)、(赤山禅院、pp.99-100)
第四章 石清水八幡宮
第五章 北野天満宮
第六章 八坂神社、(今宮神社、p.168)
第七章 吉田神社
第八章 豊国神社、(今日吉神宮、pp.213-214)、金地院東照宮、比叡山東照宮
第九章 白峰神社、水無瀬神宮、京都霊山護国神社
第十章 平安神宮、護王神社、梨木神社
()は章のタイトルにはない神社
2社ほどは思い出がない。
松尾大社、愛宕神社、御霊神社が扱われていないのが残念な気がする。西山の大原野神社は旅行気分で行くには少し離れているし、粟田神社(p.233)や建勲神社など刀剣マニアの行くところなど上げ出せばきりがなくなる。然りとて、これらの神社の起源など何も知りはしない。
あとがきを読む。「興味深い神社や神々の話は尽きないのですが、やむを得ず割愛しました。また修験道(山伏)と神社のかかわりに触れられなかったことも、残念に思っています。神社の代表的なタイプを出来るだけ取り上げたつもりですが、たとえば荘園の鎮守神とか、武士団の守護神など、京都には無い種類もあります」(p.264)。
神道の歴史を踏まえて、神社の歴史を辿るのは面白いが、失われたものを思うと暗澹たる気持ちになる。今、見えているものは明治維新の廃仏毀釈後の神社の姿であって、伝統は新たに作り出されたものである。本書には、境内図や写真があって、おおよその見当がつく。京都案内書としてもトップレベルの内容になっている(注)。
第一章では、加茂下上社のいわれ、競馬会が加茂祭とは関係なく、荘園からの献馬によっていたこと、権門として貴船神社を支配していたことなど、私にとってトリビアな話だった。
第二章は、伏見稲荷大社と東寺との関係は知らなかった。また、お山を一周してみたい。
第三章は、比叡山ケーブルに乗る前に一度行ったことがあるだけで、小比叡と呼ばれる牛尾山(標高378m)は足腰が効く間に上がってみたい。山王鳥居と石造多宝塔は要チェックだ。
東山区の京都女子大学の脇にある新日吉神宮の猿の石像も撮ってなかった。
第四章以降も旅行気分で楽しみたい。
注)私の京都の寺社に関する知識は以下による。
森浩一『京都の歴史を足元からさぐる』全6巻、学生社、2007年〜2010年
梅原猛『京都発見』全9巻、新潮社、1997年〜2007年

コメント

タイトルとURLをコピーしました