『読書術』(2000)

読書時間

加藤周一『読書術』岩波現代文庫、2000年、2023年第26刷

加藤周一(1919-2008)の『読書術』(光文社、1962年)を読んだのは高校生くらいだったかと思う。KAPPA BOOKS版は手頃だった。本書に1992年師走の跋文があるのは岩波書店同時代ライブラリーのものをそのままの載せているからだろう。「あとがき、または三十年後」を読むと高校生へ向けて「読書術」を書いたとある。ターゲットであったわけだ。書き加えたものは「外国での読書」と「読書の愉しみ」がある。なので、まずこれから読んだ。他のことはほとんど覚えていないのであった。

「外国での読書」は大学の図書館の日本語の本を読むと便利だという話が書いてあり、流石に30年の社会の動きが速くて、Amazonの便利さには勝てない。むしろ、外国ではその土地の本を読むことは、風物の描写がより身近に感じられることは納得する。

「読書の愉しみ」は「日本語による表現の多様性、その美しさと魅力を知る」(p.218)を挙げていたが、面白い批評も書いていた。

「「オーディオ・ヴィジュアル」の情報が、活字情報を駆逐する時代が来た、という人がいます。しばらく前にマクルーハンというハッタリ屋が、そういうデマをとばして、大勢の、あまりアタマのよくない人々をだましたのは、その例です」(p.216)。

「オーディオ・ヴィジュアル」の情報と文字情報(活字情報は駆逐された)の文化を享受している身としては、半分くらいは当たっていないでもないと思っているが、本の読み方(読書術)は変わると思っている。彼の読書術は三十年で変化しないと加藤周一は跋文に書いていたが、AIを使って要約を読むやり方が出てきているなかで、本の探し方も読書術であるならば時代の影響を受けている。街の本屋の減少に始まりインターネットというプラットフォームが書物の流通を変えていく。ただし、詩や小説のように読むプロセスを愉しむ仕方は無くならないと思う。

読書術

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