今谷明『京都・一五四七年 上杉本洛中洛外図の謎を解く』平凡社ライブラリー、2003年
洛中洛外図は今谷明氏の『京都・一五四七年』(平凡社ライブラリー)、瀬田勝哉氏の『洛中洛外の群像』(平凡社ライブラリー)、黒田日出男氏の『謎とき洛中洛外図』(岩波新書)の3冊を順に読むことが推奨されていることは以前に書いたことがある。
今谷明氏の本を読むと、最初から不安になる。上杉本洛中洛外図屏風は平成7年に国宝指定されたが、
「作者と成立期に関して未解決の大きな謎がある。その謎というのは、屏風に描かれている京都はいつ頃の京都の景観であるのかという景観年代の問題と、伝承と落款によって美術史家に寸毫も疑われていない作者狩野永徳との間に横たわるものである」(P9)と言うのだ。
今谷明氏は狩野永徳の筆者説には否定的だ。描かれた対象の時期が狩野永徳の活躍した時期とずれているからである。答えを知ってから読むのと知らないで読むのとはえらい違いだ。順に読むことで自分はどう考えるのか問われることになる。読書はいつでも冒険だ。
面白いのは、今谷明氏が黒田日出男氏の『謎とき洛中洛外図』(岩波新書、1996年)について、追記で言及しており(P34)、史料批判の立場は変えていないのである。
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