『須弥山と極楽』(1973)に圧倒される。

読書時間

定方晟『須弥山と極楽』講談社現代新書、1973年、1979年第10刷

インドで集大成された『倶舎論』を図解すると何とも壮大で楽しい。図書館で大きなサイズで図を見てみたい気がする。言葉で書いても説明できない須弥山世界の俯瞰図(P13)を見ていると、巨大な円筒状の風輪の上に水輪が載り、その上に金輪がある。金輪の上部が大海になっていて4つの洲があり、贍部洲(ぜんぶしゅう)が我々の住む世界である。インド亜大陸の形をしているのは、インド人の具体的な地理的知識から構成されているようである。北部に雪山(せつさん)がある。この金輪の中央に7つの山脈があり、中央部に須弥山が聳え立っている。

この後、贍部洲の地下にあるという地獄の詳細な説明がなされ、天界の説明となる。天界は須弥山の詳細構造が説明される。平面図では表せない須弥山の階層構造上に帝釈天を中心に三十三天は配置されている。立体曼荼羅どころではない。これらは地上の天(地居天)である。そして空中に住む天(空居天)が説明される。天界もまた階層構造を成しいよいよ持ってスケールが増し、三千世界の話になるのだが、言葉での説明は虚しくなった。Webに転がっている画像を見てもらうか、本書を見るのがよいようだ(そのくらいの説明が必要なのである)。

『倶舎論』では地獄、餓鬼、畜生、人間、天の五趣が語られる。阿修羅を加えて六道というのが我々の知っている世界の構成だ。ここまで詳細な仏教宇宙観を知らないのはもったいない。この後、物質の根源や劫(ごう)で時間が語られるのを読むと五趣世界の輪廻と解脱が壮大なスケールで展開して行く仏教宇宙観が味わえる。『倶舎論』を読めば入口で挫折するけど、本書は図解で導いてくれた。これで読めるようになるかもしれない。『老子』体験のように。

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