『雛を包む』(2006)で書かれた京都

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有吉玉青『雛を包む』平凡社、2006年

有吉玉青(たまお)氏のエッセイは母佐和子のことを綴ったものという印象があったが、これは茶席の話が多かった。私はお茶はやらないし、絵画や道具にも目が悪くなってから興味を持てなくなった。

それでもページをめくっていくと、片泊りの宿の話になった。右近さんと書いてあったので、懐古庵のことだと思う。鍵善良房のくずきりを取ったり、菱岩さんの仕出しで夕食をしてから、常磐津の師匠さんがやっているというお店に行ったとある。私も京都の旅館にとまって仕出しを何回か女将の給仕で食べたことがあった。広い部屋に一人で黙々と食べるのは食事が早過ぎて行けない。お茶屋で仕出しを食べると高くつくことになるので、馴染みの小料理屋に行って世間話しながら食べて、バーに行くのが気楽でよいと思うが、飲み過ぎてしまう傾向があるので相方がいた方が楽しく過ごせる。有吉玉青氏は旅館の女将の仕事に興味を持ったようだった。いつ食事をするのか、いつ眠るのか。それほど旅館の女将の時間の使い方は不思議に感じたらしい。

割烹の話も下河原の「浜作」や松原通の「てら川」で食べたことが書いてあった。浜作では河井寛次郎の器で食べたとある。少し情報が古い気がしたが、浜作の森川さんの話を引いて三度通えばおなじみになるそうだ。それでおなじみになるなら私にも馴染みの割烹がある。女将や若旦那夫妻と一緒に食事をしたり、踊りを観に行ったりもした。色々と行ってみたい店が多い京都でなかなか三度も通うことになる店はできないものである。

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