『上海』(1942)

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殿木圭一『上海』岩波新書、1942年、2019年第3刷
2019/11/27 東京堂書店

本書の原稿が書店へ渡されたのが1941年12月6日と後書きに書いてあった。米英に宣戦布告する2日前である。「中国の半封建的半植民地的地位からの脱却は、上海における歐米資本主義の驅逐を措いてはない」(P169-170)と書いてあるのを読むと、尾崎秀実の『現代支那論』(1939)を思い出す。

左の柱に章の見出しを見ると、文字が右から書かれていた。

第一章 開港以前の上海
年間六億トンの物質(当時の推計)を揚子江が運んで三角州の上に上海ができた話しから始まる。

第二章 歐米資本主義下の上海
鴉片戦争から始まる。英國は清国との貿易不均衡を清国が輸入禁止している鴉片で解消したことが語られる。「1840年代の初期に起つた鴉片戦争も畢竟英國資本主義の自由貿易のための戰ひであり、その結果たる南京條約は中國における自由貿易の第一ページであつた」(P9)。自由貿易は強者の論理である。

租界の話になる(P26)。上海租界の憲章である土地章程が説明される。租界には英國が作った共同租界とフランス租界があった。

「初期の中國貿易は(省略)、インドから中國へ鴉片、中國から英國へ茶と生絲、英國からインドへ手織物といった三角貿易の一環として遂行され、この結果、輸入においてはインドが、輸出においては英國が壓倒的割合を占めていたが、その後香港の中繼貿易港の地位が強化され、更に歐戰後は日本および米國の進出著しく、この分野にも大きな變化が齎された」(P81)。

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