吉川美夫『考える英文法』ちくま学芸文庫、2019年
このところ英語の参考書を読んでいる。
高校の時のGrammarの教科書がしょぼかった記憶があり、英文法は苦手だった。予備校の先生に習ったとき、英語の力は今がピークだと言われた。構文解析力はその通りだと思った。今さら英文法を学ぶ気は無いのであるが、学ぶ仕組みというものを考えているので、教科書や参考書のあり方には関心がある。
本をパラパラとめくっていくと、本書の特徴でもある問題中心の構成が見えてくる。文法上の論点ごとに簡単な説明から入ることもあるが、大体は設問、解説、研究問題、実力テストで論点の理解を深める方式だ。「本書は、高等学校二三年生以上の学生、その他英語に興味を持つ一般の人々を対象」(はしがき)とあるように読者の知識を前提にしているので、初学者が手に取るような本ではない。
解説の斎藤兆史(さいとうよしふみ)東京大学教授が、書いている内容が至極まともに思える。
「日本の英語教育が実用コミュニケーション重視に大きく舵を切って以来,英文法や英文解釈は時代遅れの学習項目となってしまった感がある」(448頁)。
「では,過去30年ほどの間,使える英語だ,コミュニケーションだと口頭教授に力を入れた結果,はたして日本人の英語力は飛躍的に伸びただろうか」(同上)。
「今の英語教育では英文法を明示的に教えるのはよくないこととされているから,てこ入れのしようもない」(同上)。
本当に英文法は要をなさなくなったのか?
翻訳家が訳したものを元に意味が通ればよしとすることを毎月のようにしているが、怪しい訳は構文解析しながら、誤りを訂正したりする。(他に役に立たない)背景知識がないとプロの翻訳家でも機械翻訳の誤りを訂正しきれてないのである。実務を知らなければ誤りに気づかないのはこわいことだ。
本書は、吉川美夫著『考える英文法』(文建書房、1966年)の復刊・文庫版である。吉川美夫(1899~1990)は福井県に生まれ、高等小学校を出ただけの学歴ながら、小学校教員の検定試験に受かり小学校で教えた。河村重治郎の指導で英語力を獲得し、1921年に中等教員検定英語試験に合格して福井中学の教諭となり、1925年に高等教員検定試験英語科に合格した。旧制富山高等学校、戦後は富山大学や東洋大学の教授を歴任している。
伝記があれば読んでみたくなるような経歴である。河村重治郎(1887~1974)という人も中学中退で中等教員検定英語試験に合格した。福井英語学校で吉川美夫を指導したことで、後年、『カレッジ・クラウン英和辞典』を共に編集している。
#語学 #英語
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