『落日の豊臣政権』(2016)その5

読書時間

河内将芳『落日の豊臣政権秀吉の憂鬱、不穏な京都』吉川弘文館、2016年

エピローグを読みながら、この本を振り返っている。

文禄年間という「桃山の京都」の絢爛豪華なイメージの裏側を追っていくと、豊臣政権の行き詰まりが見えてきた。

秀吉の心操の良さと見えた「金くばり」で公家衆や大名衆に配られた金が、「ならかし」で町民に強制的に貸し付けられて、その金利が対外戦争のための安宅船の建造費になったと豊臣政権の経済政策を河内将芳氏は読み解いている。

「喧嘩」や「辻切り・盗賊」に豊臣政権の治安対策が見え、秀吉の後継者問題が浮かび上がる。

「声聞師払い」や「狐狩り」といった奇妙な政策の背景に対外戦争で男が留守になる女房対策があった。

「恠異」と「大地震」は秀次事件や上下ともに迷惑な普請に苦しむ人々の姿がある。

文禄の役という対外戦争を直接描かず、当時の人々の記録から文禄年間の闇を取り上げたこの小著が文禄年間を描いた大著を読んだ気にさせるのは、今まで読んできた著作と響き合うからであろうか。

#河内将芳 #歴史 #中世史 #京都

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