『植物画の至宝 花木真冩』(2005)

断片記憶

監修・執筆 源豊宗、北村四郎、解説 今橋理子『植物画の至宝 花木真冩』淡交社、2005年

陽明文庫に伝来する近衛豫楽院(近衞家熈(いえひろ) 1667年-1736年)の三巻本がもとになっている。日本のボタニカルアートの嚆矢といえる(名和修)。

『花木真冩』125図(123種)の図版と『花木真冩貼交屏風』15図が収められている。細密画はなんとも言えない。本草学と異なり根を描くことはない。花を手にとって描いているようだ。立花の図といえよう。

本書は昭和48(1973)年に淡交社が『花木真冩』を1,000部限定で出版したものの普及版として再刊行したものである。北村四郎氏、源豊宗氏の論文をそのまま掲載し、今橋理子氏が新たに解説している。ただし、『花木真冩貼交屏風』は限定版では写真資料だが、普及版ではカラー図版として収録されている。これには意味があるのだ。何故なら、『花木真冩貼交屏風』には「虚舟之章」という近衞家熈の「虚舟」という号の印章があり真筆とされているが、三巻本には署名も印章もないため、『花木真冩貼交屏風』と画風の対比で真筆と評価されているためである。

今橋理子氏が朝顔の立花の奥義について「水揚げ」の秘伝のエピソードを紹介している。近衞家熈が立花の秘伝に通じていたのは花木の写生の姿の良さからも分かる。あるときうっかり朝顔を生ける秘訣を喋り、それが伝わっているのが面白い(近衞家熈の侍医 山科道安『槐記』)。

LE PETIT PARISIENにボタニカルアートの本を置かせてもらった。棚から取って本を見ながらこれを書いている。

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