金子拓著『織田信長〈天下人〉の実像』(講談社現代新書、2014年)を読む。
久し振りの講談社現代新書である。カバーが変わってからあまり購入することはなかった気がする。中公新書ばかり買っていた。
信長の「天下人」をどう考えるかで史料の読み方も変わるのが面白い。もちろん通説は「天下統一」=「天下布武」である。秀吉の統一政権への道を拓いたということになっている。
著者は、信長が「天下静謐」を目指し、足利将軍の不在を「天下人」としてどう振舞ったか、史料を虚心坦懐に読んでいく。通説では前提にしていたことを疑うことで世界は違って見えてきた。
しかし、最終章は意図がよく分からなかった。本能寺の変を論じると誰しもうまく行ったためしがない。書簡等の新出史料がでないかぎり論旨が不明になるだけである。管見の限り史料からは説明がつかないとして止めたほうが読後感がよかったと思う。
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