『英作文の技術 ”3世界・24文型”で伝える』(2025)で気になった点

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澤井康佑、マーク・ピーターセン『英作文の技術 ”3世界・24文型”で伝える』中公新書、2025年

本書は英語の5文型を細分化して「3世界・24文型」で英作文に応用しようという本である。以下のbe動詞の説明で気になる点があったもでメモしておく。

第4講 be動詞を用いたもの

「AはBである」「A=B」を表すためにbe動詞が使われる。

この関係は、5文型ではSVCと習った。

本書の説明は、SVCに関して、

「名詞 be動詞 名詞.」

「名詞 be動詞 形容詞.」

ここまではよい。しかし、

That building is under construction.(あのビルは建設中だ)

(省略)

They are at work.(彼らは仕事中だ)

He is at business.(彼は仕事中だ)

このような形を本書では、

「名詞 be 動詞 前置詞 名詞.」と表す。

名詞が2つなので2項動詞である。

薬袋善郎氏のFoRではこのVは②である。前置詞+名詞は副詞句だけでなく形容詞句の働きをすることがあるため、ここでは補語となる。補語(complement)は「動詞の助けを借りて、間接的に名詞を説明する働き」(『黄リー教』)である。

著者はunder constructionを補語にし、at workも補語としている。A=B に含めて「イコールの世界」としている。

「このように, 「A=B」という内容をもつ文を「第2文型」といいます.」

「be動詞の後ろにあるものは補語です. 主語とイコールの関係にあるものは補語なのです.」

ここには議論があると思われる。be動詞は「〜である」という第2文型だけでなく、「存在する、ある、いる」を表す第1文型があるとするのが学校文法だった。

OREX英和辞典第2版を引くとbe動詞の説明として自動詞から始まる。

1 (連結動詞として)…である,…の状態である,…となる

a (+補〈名・形・副句〉)…である

OREX英和辞典第2版では副句が補語として含められていることに違和感がある。文型解説を見ると、「動詞単独では用いられず、主に場所・方向・時間等を表す副詞(相当語句)を必ず伴うもの。副句 には主に away,down,off,up 等の副詞小辞や,home,abroad 等の副詞,場所・方向・時間等を表す at,in,into,on,toward 等の前置詞に導かれた句が含まれる」と紛らわしい。

〈例〉 I live 「in Perth [at home]. / The sun came up above the mountain.

この辞書の例文で副句に当たるのは以下のようだ。前置詞+名詞で前置詞に導かれた句が補語になるのはどういうときかの説明になっていない。

This present is for you.

これはあなたへのプレゼントです

I am not for this plan.

私はこの案に賛成ではない

コンパスローズ英和辞典(2018年初版)でbe動詞を引くと、

(主語=補語)…であるA❶

(存在を示して)…にあるA❷

A❶ …である。This book is of great interest to us.【V+C(前+名)】この本は我々には大変興味がある

This letter is for you.【V+C(前+名)】この手紙は君あてだ

A❷[副詞(句)を伴って存在の場所を示す」(人・動物が…に)いる

The lamp is on the table.【V+前+名】ランプはテーブルの上にある

コンパスローズ英和辞典はA❶は第2文型で、形容詞句と副詞句を区別していないが、「補語になるのは代名詞、名詞(句)、形容詞(句)とされるが、準動詞(句)やas句などもありうる」(2022文法解説)とあるので形容詞句とみている。A❷は第1文型で、副詞句としている。

コンパスローズ英和辞典は大西泰斗/ポール・マクベイ「語のイメージ」監修とあり、NHK『ラジオ英会話』を聴いている最近の私の好みに合う。

ちなみに、どちらの辞書もat business はなく、at workはあった。

本書では、学校文法で説明がない「項」について最初に説明があり大変面白かった。しかし、前置詞+名詞の場合、自動詞がとる前置詞の種類に関心が向けられており、前置詞句の働きに関する説明が少し物足りない。前置詞句が副詞句と形容詞句からなること、形容詞句は補語となることができるのが学校文法なので、前置詞句が補語となる場合の説明は丁寧にした方よかったのではないかと思う。

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