斎藤慶典『「東洋」哲学の根本問題 あるいは井筒俊彦』講談社選書メチエ、2018年
本書ははじめにで示されたように、以下で構成される。
序章 井筒「東洋」哲学
第I章 表層/深層
第II章 空/無
第III章 〈いま・ここで=現に〉
第I章 表層/深層
a)表層から深層へ
井筒の鍵語であるコトバによる分節化が語られる。言語アラヤ識の矛盾的性格が無分節状態を措定することで明らかになる。斎藤慶典氏は「この「アラヤ識」の内にもはや一切の分節化に先立つ無分節態への通路が伏在していることを示唆」(p.7)している。
b)深層から表層へ
「華厳、禅、イスラームの存在一性論などに依拠して、井筒と共に「無限定」な「存在エネルギー」の塊から限定された個々の存在者が姿を現してくる過程がどのように論理化されているかを」(p.71)辿った。
プロティノスの「流出説」と井筒の立場は別章で論ずる(p.87)。
c)大地と理性ーーロシア的人間
19世紀のロシアに突如花開くロシア文学が語られる。西洋化の波は西洋的理性(コスモス)とロシア的大地(カオス)の間の鋭い緊張を生み出した。ロシア文学の「原始的自然性」に「のちの井筒が、「東洋」哲学の根底に見出す「空」と呼ばれる「力の充溢」のロシア的形態」(p.90)をすでにみていたと斎藤慶典氏は指摘している。
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