野村胡堂『銭形平次捕物控 傑作集二 人情感涙篇』双葉文庫、2019年
書誌情報
『銭形平次捕物全集』(河田書房刊、1956年〜1958年)を底本とし、「人情感涙」をテーマとした6編を厳選したという。
解説を郷原宏氏が書いていた。
よく岡本綺堂の『半七捕物帳』と比較される。『半七捕物帳』はシャーロック・ホームズを幕末期の江戸に持ってきたようなものだ。大正6年(1917年)に『文藝倶楽部』に掲載されたのが始まりだ。『文藝春秋』の別冊としての読物雑誌の創刊に際して、野村胡堂に求められたのは『半七捕物帳』のようなものであったという。
ラジオの朗読で『半七捕物帳』から「お文の魂」などを篠田三郎氏の朗読で聴くと、江戸の幕末の風俗の描写が精緻であることがわかる。『銭形平次捕物控』は寛永期の江戸であったが、あまり情景が見えてこない。先にも書いたが「です」「ます」調で、流行語を取り入れているのでテンポよく読めるポップな小説である。事件中心なのである。そういえば、銭形平次が得意の寛永通宝を飛ばして悪党をやつける場面がなかった。だから「人情感涙篇」だったか。これ以上は中身につて触れるのはよそう。ミステリーなのだから。
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