『新選組』(2003)

Goinkyodo通信 読書時間

松浦玲『新選組』岩波新書、2003年

NHKの歴史探偵で「真相! 池田屋事件」(2021年5月12日)を見ていたら、中村武生氏の『池田屋事件の研究』(講談社現代新書、2011年)を読んでみたくなった。探しても出てこないので、見つけた本書を読むことにした。

第2章第2節池田屋事件は新選組側の史料から共通点を抽出したという。それだけ史料間で不一致が多いということだ。近藤勇の手紙は話を盛っていると考えられているようだ。その意味で長州側の史料から迫った中村武生氏の研究は画期であった。番組でも長州藩側や土佐藩側の史料が使われていた。近藤勇等が四人で戦えたのは、浪士側が大刀を階段下の刀掛けに置いたのを、新選組が使えなくしたことも大きいと考えられる。人数すらアバウトなのだ。霊山歴史館もしばらく行っていないので、新出史料を見に行きたくなる。ただ、そういう陳腐化する知識を追い求めても仕方のない歳になったことを自覚せねばなるまい。

専門外の知識についての考え方はあると思う。強みは専門分野であるし、時間の配分というものは自ずと明らかである。多くの知識は陳腐化していくことが避けられない。いくつもの人生を生きることが読書の楽しみであるとしたら、陳腐化する知識を追い求めても仕方がない。モラリストを読むという楽しみをあとにする必要はないのだ。

年齢を重ねて陳述記憶が衰えてくると新しいことがおっくうになる。老人は長期記憶を活かして短期記憶に頼らない設計をしないといけない。今のスキーマを3年後にどうするかを考えることが、老後を考えることになる。

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