加登川幸太郎『三八式歩兵銃 日本陸軍の七十五年』ちくま学芸文庫、2021年
購入予定リストにあったので、購入した。
解説は予想通り一ノ瀬俊也氏。
文庫本750ページの大著である。
著者の加登川幸太郎は、陸軍士官学校(四二期)出身で最終階級は中佐であった。予算班長を務めるなど、陸軍の戦争指導を経験している。
三八式とは「日露戦争の終わった明治三八に仮採用、翌年制定され、太平洋戦争まで用いられた小銃・三八式歩兵銃を日本陸軍の象徴と位置づける。それは、陸軍が装備の更新をろくに行えないまま、この古い銃をもって太平洋戦争に突入したからであった。著者にとっての三八式は、装備の更新を怠り精神力にひたすら依拠した陸軍の思考法を体現ふるものだった。本書の問題意識は〝なぜそうなったのか〝の一点にあるといってよい」(P742-743)。
装備から戦争を見ていくのは重要だポイントと考える。日露戦争が近代戦争のあり方を変えたということは何度も読んできたが、陸軍はなぜ機動戦を想定した装備をしなかったのだろう。
「日本陸軍の装備でも、十分な火砲や戦車を持たない中国軍相手の戦闘では勝てたが、戦争に勝つことはできなかった。機動力がないので包囲殲滅に失敗し、中国側の抗戦意識を決定的に打ち砕くことができなかったからだ」(P745)。
陸軍の内部者による陸軍批判である。
三八式はボトルアクションによる小銃で5発弾丸を装填できるが、一発撃つ度にレバーを手動で操作し薬莢を排出し、次弾を薬室に装填する必要がある。これでは米軍のM1ライフルのように引き金を引くだけで撃てる半自動式小銃には性能で見劣りがする。いかにも旧式という感じがする。
まずは明治の戦争を日露戦争から入り、明治国家の成立期に明治新軍はどう創設されたかを見ていく。
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