上野千鶴子『情報生産者になる』ちくま新書、2018年
通勤電車の中で読んでいますが、382頁と厚い新書です。どうも、「情報」や「生産」とか「技術」とかいう言葉の組み合わせに弱いので手にしました。梅棹忠夫の『知的生産の技術』(1969)や渡部昇一の『知的生活の方法』(1976年)も知的消費ではなくて知的生産を扱っています。
上野千鶴子氏の『知的生産者になる』は社会科学の論文を書くという研究極道の勧めの本です。清水幾多郎の『論文の書き方』(1959年)は古すぎて言及がありません。川喜田二郎の『発想法』(1967年)で有名になったKJ法について言及していて、「うえの式質的分析法」が紹介されています。「ケース分析とコード分析とを併用して、データを事例の文脈においてと比較の文脈においての両方で分析するという方法です」(P241-215)。上野千鶴子氏は川喜田二郎が発案したKJ法を使い倒して上野流に改訂しているでした。詳しくは『生存学研究センター報告』27号に掲載されています。
本文を読まなくても、目次を読めば社会科学の論文の書き方について解説した実用書だということが分かります。使われているエピソードが上野千鶴子氏の指導した学生の論文であるのが面白いところです。
Research Questionの立て方から始まり読者に届けるまで「情報生産者」の後押しをしてくれる本です。私にとっては社会科学の入門書となりました。
注)
上野千鶴子 監修 一宮茂子・茶園敏美 編 『語りの分析〈すぐに使える〉うえの式質的分析法の実践』(『生存学研究センター報告』27号)立命館大学生存学研究センター、2017年03月03日)
注)
川喜田二郎の『発想法』『続・発想法』はデザイン思考の観点から読み直す必要があると思います。情報加工(KJ法)ばかりが強調されますが、本のタイトルを素直に見れば情報の質的分析法としてだけ見ることが狭い受け取り方であることが分かると思います。
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