石井進『日本の歴史(7)鎌倉幕府』中公文庫、1974年、2004年改版、2018年改版第6刷
五味文彦氏の解説を読む。
「本書は啓蒙書・一般書でありながら、それまでの学問の水準を大きく越え、叙述の面でも優れていることから、以降の鎌倉時代の通史叙述の範となった著作である」(P537)。
本書の書き出しを読むと物語風であったりする。語り口はのんびりとしていかにも一般向を意識したものだ。
「1180年(治承四)ハ月(本書ではすべて陰暦)十七日の夜、久しぶりに晴れわたった平安京の大空には、みごとな明月がかかっていた」(P12)。
五味文彦氏は解説の方針を簡潔に書いている。
「本書で扱われている論点や問題がその後いかに展開されてきたのか、また継承されてきているのかを中心に記すこととしたい」(P537)とある。
道理で参考文献が新しい訳である。
冒頭の平安京の叙述と同じ日に頼朝が挙兵するところから始まる。伊豆国目代の山木兼隆の館を夜討ちするのだ。今まで色々と読んできたことが背景にあるので、素直に読める。
石橋山の合戦に敗れた後の話になる前に、石井進は東国の歴史や風土、武士の暮らしぶりについて説明を入れる。なる程、叙述のうまさがある。国衙領と荘園の簡単な説明もある。
このところ律令国家や王朝国家と読んできて、荘園についての知識が足りないことが気になってきた。荘園について、理解を深めてから、鎌倉幕府に戻っても遅くはないだろう。どうせ廻り道なのだ。
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