『日本人は中国をどう語ってきたか』(2012)

読書時間

子安宣邦『日本人は中国をどう語ってきたか』青土社、2012年

書誌情報

『現代思想』の2011年9月号から2012年11月号までの15回の連載された「中国論を読む」が基になっている。「中国論を読む」として昭和イデオロギー研究会の市民講座で、2010年5月から2012年9月まで報告され、その討議をふまえて書き直され、『現代思想』に連載された。

この本は宿題として読んだ。

2019年11月の昭和思想史研究会で「明治維新」の近代・15として「「支那民族運動」に正面する者ー尾崎秀実『現代支那論』を読む」が子安宣邦先生によって講義されたが、その参考文献としてあげられていた。

本書の8章「〈事変〉転換への戦闘的知性の証言 尾崎秀実「東亜協同体」論を読む」は昭和14年(1939)正月の『中央公論』の巻頭論文「「東亜協同体」の理念とその成立の客観的基礎」を論じていた。

今回の講座は昭和14年5月の岩波新書『現代支那論』を論じているが、〈ゾルゲ事件〉から尾崎秀実を見てしまうことの誤りをいうだけではなく、「〈ゾルゲ事件〉が押し隠してしまった尾崎の現代中国をめぐる認識作業がわれわれにとってもつ深い意義を明らかにするためである」とされた。

『現代支那論』(1939)で、尾崎秀実は当時の中国を捉える分析概念として「半封建性」と「半植民地性」とをあげている。ジャーナリストの尾崎秀実が指摘した中国の民族運動に対する日本への要請を読む限り、誠実な知性を感じざるを得ない。子安宣邦先生のいうところの良質な「アジア論」を読み取らなければならない。

15章ある本書は北一輝、内藤湖南、橘樸(たちばなしらき)、尾崎秀実、森谷克己、平野義太郎、石川達三、火野葦平、竹内好、加々美光行、溝口雄三が論じられている。私も本書を読むために遠回りをしているついでに年表を整理したくなった。近代日本昭和史は戦争の歴史である。

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