『天文法華一揆』(2009)再読

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今谷明『天文法華一揆 武装する町衆』洋泉社新書MC、2009年

今谷明氏が事件史叙述として、西欧の歴史家に倣って書いた一般書である。

あとがきで「十六世紀の中葉、ユーラシア大陸の両端で奇妙に類似した二つの宗教弾圧事件が起った。一つは一五三六年日本の京都で起った天文法華の乱、もう一つは一五七二年フランスのパリを血で彩ったセント=バーソロミューの大虐殺である。共通しているのは、どちらも新教に対する旧教の、しかも権力者側からの弾圧であること、京都・パリという一国の中心都市で起った事件であるという点である」(P333)と書いている。天文法華の乱は「歴史家の極めて興味をそそられる政治的現象であるにもかかわらず、従来研究は少なく、単行本の形でこれを扱ったものは見当たらない」(P334)と書いている。

ついでにメモしておくと「本書はあくまで一般向けに書かれた「読み物」であって研究書ではないということである。研究者の方々には悪いが、専門家は最初から相手にしていないことをはっきりと申し上げておく」(335)とある。その割には付章 松本問答や文献解題・目録、法華一揆関連年表など力が入っている。

洋泉社新書MCに再版するに当たり、「解説 事件史叙述へのこだわり」を河内将芳氏が書いており、学問的な位置付けが簡潔になされていた。『日蓮宗と戦国京都』(淡交社、2013年)を後に書く著者を編集者は見抜いていたといえる。

しかし、何故、解説が必要なのか。一般書だからか。『天文法華の乱 武装する町衆』(平凡社、1989年)が出てから20年ということで研究が進んだことで、専門家による解説が必要になったと考えられる。

キーワード

#今谷明 #河内将芳 #天文法華一揆

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