W. ハイゼンベルク、湯川秀樹序・山崎和夫訳『部分と全体 私の生涯の偉大な出会いと対話』みすず書房、1974年、2002年新装版第4刷
第2章 物理学研究への決定(1920年)
ハイゼンベルクはミュンヘン大学で数学を勉強することに決めて、数学の教授のリンデマンを訪れる。そこで「ひどく流行おくれの調度を備えつけた陰気な部屋に訪問した」。子犬に吠えらるなか数学者のヘルマン・ワイルの『空間、時間、物質』を勉強したというと、リンデマン教授に「それでは、あなたは数学をやってもどうせだめでしょう。」といわれて、数学を勉強することに終止符を打たれてしまう。
父と相談して数理物理学をやるためにゾンマーフェルト教授を訪れる。「ゾンマーフェルトは明るい部屋に私を迎えた」。そして「あなたはあんまりむずかしいことを求めすぎていますよ」と言われる。ゾンマーフェルトの門下となり、ヴォルフガング・パウリを紹介されることになる。明暗の対比が面白く、この辺りは不思議な巡り合わせを感じないではいられない。
ゾンマーフェルトに小さなことに対して注意深くあれと要請されたあと、友人のワルターの家でシューベルトの三重奏曲変ロ長調を練習した。ワルターはチェロを弾く。ハイゼンベルクはピアノが得意だったようで音楽の道に進むか悩んだときがあった。ワルターの母親やバイオリニストのロルフらとの対話も素晴らしい。
通勤にちょうど良い長さの章の対話を読みながら過ごすと、すぐに着いてしまう。
注)パウリは「パウリの排他原理」で1946年にノーベル賞を受けている。
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