W. ハイゼンベルク、湯川秀樹序・山崎和夫訳『部分と全体 私の生涯の偉大な出会いと対話』みすず書房、1974年、2002年新装版第4刷
何かの縁で買ってから玄関にずっと置いてあったのを手に取る。もっと早く手に取るべきだったか。まるでプラトンの対話篇のような哲学的な対話からなる自叙伝ともいうべき本である。1919年から1965年までが20章で扱われている。
若い時から鋭い。第1章 原子学説との最初の出会い(1919年-1920年)では、「自然法則には任意性の入り込む余地はない」(P3)という信念を18歳のハイゼンベルクは持っていたことが友達との対話の中で明らかにされる。当時の物理の教科書の挿絵で、二酸化炭素の分子は1つの炭素原子と2つの酸素原子からなると説明され、ホックと留め金で繋がっていた。ハイゼンベルクは原子どうしの結びつきの関係をホックと留め金で表示することは「技術上の目的に応じていろいろ好きな形に変えうる全く勝手なもののように思えた」(p3)と批判したのだった。
今でも、炭素原子は4価と習ったので、炭素原子が他の原子と結びつくための手を4つの手持っている。2つの手を持つ酸素原子と結びつくことをポンチ絵で説明しているのだろうか。
この本がノーバート・ウィーナー の『サイバネティクス』(岩波文庫、2011年)のように文庫で気軽に読めないのは残念だと思う。重いけど、しばらく通勤のお供にしよう。
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