石田秀雄『わかりやすい英語冠詞講義』大修館書店、2002年、2015年第11刷
主要参考文献があるが、用例の出典は煩雑になるという理由で明記されていない。語句・用例索引はアルファベット順であり、読み終わったあとの参照用に考えられている。
著者の石田秀雄『これならわかる!英語冠詞トレーニング〔増補改訂版〕』(研究社、2024年)を読んで、英語の冠詞の勉強を再開した。そこで、元になった本を読むことにした。同時に買ったので、本来は発行順に読めば良いのであるが、このタイトルを見れば、よりわかりやすい後者を読みたくなる。2色刷りでイラストも付いている。大修館書店の単色で文字も小さい本はどうも取っ付きにくい。
第1章 冠詞とはどのような存在か
言語類型論的に見れば、(省略)aやthe〔という英語の冠詞〕は「どの言語にも観察される普遍的なものではなく、周辺的な存在だからこそ、そこには英語にしか見られない、まさに英語に固有の特徴が如実に現れている」(p.12)。
日本語もラテン語も冠詞はないのであるがその言語の在り方は様々である。
(注)
引用文の「,」は「、」に置き換えた。以下同じ。
〔〕は文意を明確にするため筆者の責任で補った。
第2章 可算名詞と不可算名詞の使い分け
可算名詞と不可算名詞を決める基準として「有界性(boundedness)という概念が導入される。
「有界性は認知言語学でも用いられている概念ですが、ここでは簡単に「ある名詞の表している対象が境界線によって仕切られているのかどうかを意味するものとして理解しておくことにしましょう」(p.17)。
「有界的な存在として認識されるものとは、境界線によって仕切られているために、個体的、個別的、非連続的といった表現によって特徴づけられる性質を有する」(p.17)。「他方、非有界的な存在として認識されるものとは、境界線がないかもしくは明瞭でないために、均質的、非個別的、連続的といった表現によって特徴づけられる性質を有する」(pp.17-18)。
「有界的か非有界的かの判断は、対象の外見的な特徴をそのまま反映したものではなく、話者が対象をどのようにとらえているかを映し出したものとして見ることができます(もっとも、言語は慣習でもあるわけですから、そうした慣習からあまりにもかけ離れた使い方は、原則としてできません」(p.18)。
この辺りは常識的な見方と一致する。
この後に、有界性を判断するための6つのパターンが提案される。
判断基準Ⅰ:an area of
判断基準Ⅱ:a period of
判断基準Ⅲ:an event / occasion of
判断基準Ⅳ:an instance of
判断基準Ⅴ:a kind / type of
判断基準Ⅵ:a unit / serving of
本章の結論は、可算名詞と不可算名詞の使い分けは難しくない(p.68)。
第3章 単数と複数の使い分け
『これならわかる!英語冠詞トレーニング〔増補改訂版〕』を読んで一番記憶に残っているのは、単数と複数の定義だった。
定義4
単数:one
複数:other than one
「単数は1、複数は1以外」(p.80 前掲書)
多分、普通の人はこれが一番納得しにくい。これは日本語と英語における数の役割の違いからもきている。「単数とは1を表し、複数とは2以上を表す」(p.73)と教えられてきた日本と違い、英語では1以外の数を複数とする。
本章の結論は、単数と複数の使い分けは難しくない(p.108)。
第4章 定冠詞と不定冠詞の使い分け
「定冠詞theは、話者が聞き手との間で共有している知識(その中には、場面や文脈も含まれます)を絶えず参照することによって、問題となっている名詞の指示対象がどれであるか聞き手はわかっているにちがいないと話者が判断していることを表す文法標識です。換言すれば、それ以外の何物でもないと言えるほど、聞き手は指示対象を唯一的に同定しているはずだと話者が考えていることを示すものです。本章では、このような定義にしたがって、外界照応、前方照応、後方照応というtheに関わる主要な用法を詳細に検討し、それらの用法が成立する様々な基盤について見てきました」(p.175)。
したがって、定冠詞と不定冠詞の使い分けは難しくない(同上)。
第5章 冠詞に関わる様々な問題
名詞や動詞などの内容語と異なり冠詞や前置詞などの機能語の学習が難しくなるのは仕方がない。それでもだいぶ見通しが良くなってきた。
本章では、冠詞との関係で「特定性、総称性、固有名と冠詞の関係、あるいは総和といったごく限られた問題」(p.229)が論じられた。
結論は、多くの用例に当たり、英語の感覚を磨く(同上)という常識的なところに落ち着いた。
「どの冠詞を用いたらよいのかという問題には、本書の中で繰り返し述べたように、対象の解釈という話者自身による主体的な認知活動が入り込んでくるだけでなく、聞き手との間で共有している知識をつねに考慮に入れておくことがどうしても必要になります。そのため、冠詞についての完全に予測可能な規則、絶対的な規則といったものを一般化あるいは定式化することは不可能に近いという事実も、ぜひご理解いただけたらと思います」(p.233)。
本書について学んだのはまさにその点に他ならない。
私の結論としては、石田秀雄『これならわかる!英語冠詞トレーニング〔増補改訂版〕』(研究社、2024年)の確認問題AとBを時々復習することでよしとするかな。
コメント