真夏の京都

旅の時間

今年の夏は暑い。京都の夏の暑さ知る身としては身軽な服装で来たいところだ。しかし、39度の予想のなかジャケットを着ている人は私の他には見かけない。

ナイトキャップ用の本をふたば書房京都八条口店で手に入れて、どこか涼むところを探そうと思って、海外からの団体さんで混み合う新幹線のコンコースを後にした。

しばらく行かないうちにふたば書房京都駅八条口店のレイアウトが変わっていて少し戸惑った。入口左手の京都本コーナーや左側の壁にあった人文が文房具売り場になっていたのだ。右手中程に移動していた人文の品揃えは私好みなので、いくつか手に取ってみて、稲葉継陽『細川忠利』(吉川弘文館、2018年)を買う。『近世日本社会成立史』(校倉書房、2009年)を書いた稲葉継陽氏の本を読みたいと思っていたので、天河大辨財天の柿坂神酒之祐宮司と鎌田東二先生の『天河大辨財天社の宇宙 神道の未来へ』(春秋社、2018年)はまたにした。なんせ鞄に入らない(お菓子のせいとは言わない。)のだから仕方がない。夏はどうしても着替えが必要なので、大きめのバックにすればよいのに普段の仕事用の手提げで着てしまうのは、京都が非日常ではなく生活に繋がっているところと考えているせいであろう。タクシー乗り場側に出るドアがレイアウトの変更の影響か使えないことに気がついた。これはタクシーに乗るなということかと合点して元に戻る。

駅の喫茶店は海外からの観光客で溢れかえっていたので、二条までJRに乗ることにした。電車は空いていて、読書には都合がよいのだが、残念ながら二駅目で降りる。旅は目的のないのが一番であることは言うまでもない。目的が無ければわざわざ真夏の京都に来なくてもよくて、そうなればこの駄文を書き連ねることもない。ただし、これからは週末のお誘いの断り方を工夫する必要があると思ったことは確かだった。2件の用事を抱えるとインターネットで注文できるのに、わざわざ出向くことに何らかの精神的なメリットがなければならない。

乗ったタクシーの乗務員さんに39度になると言われた。北野天満宮の一の鳥居前につけてもらう。京の七夕の笹が飾られていた。クマゼミの鳴き声がうるさい参道を歩いて、外灯の下からミストが出ているのに気がつく。熱中症対策なのだろうか、気休めなのだろうか。楼門前の梅苑の入口のあったところに文道会館が出来上がっていた。三光門を潜ると、右手の授与所が工事していて、西回廊に授与所が移っていた。並ばずにお参りできるのも真夏のせいであろう。

東門から上七軒へ行き、打水している人を左手に見送り老松へ入る。夏柑糖は既に終わっていたので、晩柑糖を届けてもらうことにした。要件が済めば少し休みたくなるのは人情で先程見かけた人のいる喫茶店のドアを開ける。客は誰もいない。カウンター側の奥に座る。花街出身と思われる店の人に普段は飲まないアイスコーヒーを頼むと、トーストを付けますかと聞いてきた。モーニングの時間帯であった。格子窓から外が見える作りは京都ならではで、店の準備に忙しいく働いている街の人々が見える。出来上がったトーストは6分割で一口サイズに切ってあり、いかにも花街のトーストだ。美味しい。上七軒の芸舞妓さんの団扇が掛かっているを見ていると、去年の寿会のパンフレットを持ってきてくれて、フィナーレのページの写真を開けて、この芸舞妓さん達のだという。梅はる姐さんの顔を見つけて口許が緩む。涼んでいると、二人組みの老人が入って来たが、いかにも慣れていない。大阪から用事で来たことが会話で分かる。聞いていても仕方がないので、喫茶店を後にする。振り返ると喫茶梅という看板が上がっていた。

久々の京都モーニング事情(番外編)

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