大岡信『蕩児の家系 日本現代詩の歩み』思潮社、1975年
帯にある清岡卓行先生の批評が本書の意義を要約している。
「日本の近代・現代詩の流れを、「大正詩序説」、「昭和詩の問題」、そして「戦後詩概観」の三部において考察したもので、大岡信がいわばそのホーム・グラウンドにおいて、思う存分、柔軟無比な批評を発揮した書物である」。
大岡信が大正から始めたのは、明治と大正の間に断絶があるとみていることによる。大正は口語自由詩の時代である。明治の文語定型詩を飛び出した口語自由詩という蕩児の行き着く先から議論を始めたのだ。無論、蕩児は還らずである。
大正詩序説
文語から口語へ、定型詩から自由詩へと二重に制約が外れた口語自由詩が辿った道を読んでいく。本が出版された当時は読めなかったが、今、冷静に読むことができるのは、時の経過のせいとばかりは言えない。そんなに詩を読んできた訳ではないからである。
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