『ささやかな日本発掘』(2006)

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青柳瑞穂『ささやかな日本発掘』講談社文芸文庫、1990年、2006年kindle版

書誌情報
新潮社より1960年に刊行されたものを底本に、ふりがなを加えた講談社文芸文庫版を電子書籍化したという。

古美術の初心者として何から読んだらよいかと先達のIさんに問うと、まずは広く骨董、古美術のエッセイから入ったほうが楽しいということで何冊か勧められたので、即、最初の本をkindle版で読むことにした。骨董趣味者であれば、単行本を購入するであろう。残念ながら私は骨董趣味者ではない。しかも、新幹線の走る前の時代の本である。内容が骨董化しているかもしれないが何しろタイトルが気に入ったのであった。まだ、ロマンが残る時代を象徴するタイトルである。

著者が陶片に目覚めたのは京都国立博物館で見た大量の青磁の陶片と書いてあった。その展示室を探すときの玻璃戸棚(ヴイトリーヌ)という言い方も少し骨董くさい。今ならガラス戸棚とか、ガラスケースくらいでよい。フランス語のショウウインドーを出すまでもないが、著者が仏文学者で翻訳家だから致し方ない(「かけら」)。

梅干しの種の中身を天神というのは知らなかったが、それを取り出すため、梅干しの種を石斧で割る話は面白い。石斧が考古学的な物だからだ。10年ものの梅干しの味も夢想するしかない(「天神さん」)。

エッセイであるので骨董以外の話も多い。読んでいくうちに、骨董の本に関して自分が初心者ともいえないことに気がつくのであった。大和の骨董シリーズが3冊+1冊ある。奈良本辰也の『骨董亦楽』もあった。骨董は買ったことがないので初心者であるが、本に関しては、全くの初心者というわけでもなかった。

「自分の生活からはみ出ているような美術骨董品は、一見、きらびやかに見えるけれど、存外、その人の生活をうるおすこと少いのではあるまいか。その点、むかしの茶人は、自分に使いこなせるものしか選択しなかったようである。なになに好みなどというのも、その現れの一つであろう。やっぱり、人にはそれぞれの見識というものが必要である」(「実用からはみ出た脚」)。

この話は、二月堂の机のイメージで求めた勉強机が、鎌倉物で、「脚や香狭間(こうざま)には、唐草や小禽や蝶の精巧な蒔絵が施されている。もとより消えがでてはあるが、さすがに古のけんらんの跡をとどめているのだ。これでは立派すぎて困る」(同上)という落ちが付いている。春日五斗台といって春日神社で供物をのせるものに使用したものとわかったら、「いよいよこの上で原稿など書けなくなった」(同上)。

話の内容は十分骨董化していた。

#骨董 #古美術

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