『神界のフィールドワークーー霊学と民俗学の生成』(1999)

読書時間

鎌田東二『神界のフィールドワークーー霊学と民俗学の生成』ちくま学芸文庫、1999年

1.どこから読むか

いつもはあとがきから読むのだが、

「チ」のジレンマ あとがきにかえて

新版あとがき ふとまにかがみ・テイクⅡ

文庫版あとがき

解説 島薗進

4つのうち、「ふとまにかがみ」 はテイクⅡとある。これは、書き下ろしの冒頭のエッセー「ふとまにかがみ」から読むしかない。

「ふとまにかがみ」は天川弁財天へのバスの車窓から見た吉野の描写から始まる。おなじみの宮田宮司に会うエピソードである。「ふとまに」が「フトマニ(太古)」という呪術のことと理解していた著者は宮田宮司から「フトマニ」についてニュアンスが異なった説明を聞いた。「物事が生起し、立ちあらわれる姿をその通り映し出し、その顕われる力や方向をそのまま実現することが「フトマニ」だというのである」。神社は世界を映す鏡だという。

「フトマニ」をおさらいした。

本書は8つの論文が収められている。著者は「本書は、いわゆる「学術専門書」ではない。しかし、語本来の意味で「学術」たることをめざしてはいる。「愛智」の学としてのフィロソフィア=哲学の業でありたいと思っている。」と書いていた。

2.ふとまにかがみ・テイクⅡ

「弁財天に行ってくれますか。その前に、丹生川上神社下社に立ち寄ってください」。著者は奈良が好きである。吉野の水神ネットワークに触れた後、夜の「さびしさ」を書いている。天川弁財天が思索を深める力を与えるのだろうか。

3.やっと解説へ

鎌田東二氏の最初の論集は青弓社版(1987年)を経てちくま文庫版(1999年)となったが、解説は島薗進氏だった。ちょっと得をした感じだ。

島薗進氏が描く鎌田東二は、まだ、法螺貝を吹かない頃のほら吹きである。渋谷でビールと讃岐うどんの取り合わせで「宗教学や文化人類学、日本宗教思想史や神道史、ソクラテスや空海、現代思想や言語理論、神秘学や現代文学、漫画やポップカルチャーと博識ぶりはとどまるところをしらなかった」から、ほら話に聞こえたに違いない。

4.さて、スサノヲ

鎌田東二氏の最初の論集『神界のフィールドワークーー霊学と民俗学の生成』(創林社、1985年)の冒頭の論文「神話的想像力と魂の変容ーー出口王仁三郎と折口信夫をめぐって」で出口王仁三郎と折口信夫のスサノヲ観を論じている。

続きを読む “『神界のフィールドワークーー霊学と民俗学の生成』(1999)” »

コメント

タイトルとURLをコピーしました