『養生訓』斜め読み

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『養生訓』は制欲を説く。食欲と性欲は内敵である。外敵は外邪(がいじゃ)として暑さ、寒さ、湿気などの生活環境をいう。今なら熱中症対策を書いただろう。

現代人の生活を見通したかのように、「座り続けるな」「眠りすぎるな」という。「とにかく身体を動かせ」ということだ。運動不足と睡眠劣化の寿命への影響を科学的に言おうとすると難しい。そういう答えがなくて、経験的に良いと考えられていることで我々は生きているのだ。

現代を生きる我々は、時代の子であることを免れない。当時、貝原益軒が考えたように、我々も生き方を学ばねばなるまい。「人生いかに生きるか」は「人生は少欲に徹すべし」とか幾つかの形而下の標語に分解されて考察されるだろう。答えのないことを我々は日々選択して人生を終える。「下寿」を超えて、凡人は長生きして味わえるものがあることに納得する。

而して、酒毒を用いて身を害するとは、『養生訓』を読んだことにはならない。

知的生産でも知的生活でも、現在の『養生訓』があってこそ成り立つ。そういう本を待望する。科学的に証明できないことは書かないというのは、科学に対する誤った信仰である。論文は常に新奇であり、新たな論文によって書き換えられる運命にある。運命という言葉は科学的な用語でないことは言うまでもないが、我々は伝わることがあることを知っている。

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