朧谷壽『日本の歴史6 王朝と貴族』(1991)

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朧谷壽『日本の歴史6 王朝と貴族』集英社、1991年

通史のうち古代国家の終りの二世紀を扱っている。朧谷氏の描き出す人間ドラマが面白い。道長の栄光も清少納言の才知も楽しい。

『御堂関白記』での東三条院への度重なる気遣いも、姉の詮子が道長を引き立ててくれたことを知れば腑に落ちる。やはり、通史を読むべし。

この本は二条大路の街歩きで中村氏が貴族の邸宅の解説で使ったネタ元であった。

二条大路の三邸は土田直鎮氏の『日本の歴史5 王朝の貴族』(中公文庫、1973年、2004年改版)と同じ元ネタだけれど、朧谷氏は「除目の結果は史実であるが、兼通が重病をおして参内して云々、の点は確証がない」としているのに対し、土田氏は何の限定もしていない。

『王朝の貴族』の解説で倉本一宏氏が書いているように「歴史物語を史料として使って記述した部分が…古記録に基づいて確実に史実を踏まえたものか、歴史物語の記載をそのまま自己流の文章に書き直したものなのか」私のようなシロウトには区別が付かない。一般向けの本であっても史料の吟味の結果は明らかにする必要があると思う。土田氏が『王朝の貴族』を書いた当時はまだしも、一般向けの歴史は面白ければよいというような時代ではなくなっているのであるから。

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